火打石は使っているうちに火打金を打ち付けた部分が少しずつ砕け、角が取れて火花が散りにくくなる。

そうなったらハンマーなどで叩き、部分的に割ったり欠けさせたりして新たな角を作り出せば良い。
しかし、石にもよるが鋭角が出るように割るのは結構難しかったりする。木に木目があるように
石にも石目というのがあって割れやすい方向があるらしいが、その見極めも馴れないと難しい。
上手く角が出ずに大きく割れてしまったり、上手い具合に角が出てもまた使っているうちに角が取れる
ので更に割る。そんな事を何度も繰り返せば石は当然段々と小さくなっていく。小さくても火花を
散らす事は出来るが、やはり小さいと使い辛い。

自分が買った火打石は元々小さかった上、新たに角出しの為に何度か割ったので買ったばかりの時と
比べると大分小さくなってきた。今のうちに予備として火打石をもう1個手に入れようと思ったのだが
火打石とは言え所詮は石ころ。そう考えるとわざわざ買うのもなんか馬鹿らしくなる。
という事で石ころならば掘り出すまではいかなくとも、自分で拾えないものかと考え産地に目を向ける。

調べてみたら、なんと我が県は火打石の産地。
しかも今まで行っていたキャンプ場のすぐ近くにも昔掘り出していた場所がある。
掘り出していた場所には売り物にならない屑石がまだあるはず。
もしかしたら流れ出した石が河原にも転がっているかも知れない。
ならば、キャンプに行くついでに探せばいい。

と、矢継ぎ早に答えが出たのはいいが、よく考えると現在なかなかキャンプに行けない状態である。
なので諦めて金を払って手に入れる事にした。しかし、売ってる火打石をただ買っても面白くない。
何か良い方法はないかと無い知恵を振り絞り探ってみた。
そしてこんな物を見つけた。






メノウの原石、重さ6kg超。野口英世2枚でお釣りが来た。ちなみにメノウは火打石として使われる
幾つかの石種のひとつで硬度が6.5〜7度。この程度の硬度があれば火打石として使えるのだそうな。
この塊を割って使えば良いのだが、毎日使う訳でもないので残りの人生全て掛けても使い切ることは
無いだろう。しかし、握り拳より小さな石を買うよりは遥かにマシである。と自分に言い聞かせる。

石工ハンマーで力いっぱい何度か叩いてみたがなかなか割れない。
硬度と強度は別かも知れないが、流石に鋼を削り落とすような硬い石の大きな塊は易々とは割れない。
筋が入ってくびれた部分に狙いをつけ、渾身の力を込めて数回叩きなんとか割れた。
これを売った人は、まさかこの石が砕かれてこんな目的に使用されるとは思っていないだろう。
そう考えると勿体無いような申し訳ないような気になるのだが、目的の為には致し方ない。



外側に近い部分の色は少々茶色がかっているが、中は薄い乳白色で幾らか透明感があり綺麗だ。
ここから更に使い易そうな手頃な大きさのものを割り出す。





割れたと言うより剥がれ落ちたような欠片は、剥片石器のナイフのようなエッジの鋭さである。
実際、剥片石器にはメノウで作られた物もあるらしく、エッジの鋭さを触って確かめたところ
ちょっとした物なら切れそうな鋭さであった。(後でヒビが入ったところから手で2つに割ったのだが
指先が少し切れてしまった。)　マジマジと石を眺めていたら、縄文式土器や石器に興味を持った
遥か昔の記憶が甦り、石器を作ってみるのも面白いかなと少々思った。
しかし今回の目的は石器ではなく火打石なので、実際に着火可能かどうか試してみた。





火花の散り具合も申し分なく、ちゃんと火口に着火出来ることを確認。
ああ、焚火がしたくてウズウズする。