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   そろでそうろう

森への入口 其之参

   

 森への入口 其之参
 暫し景色を堪能したのち、滝見の場所まで下り始める。


あの急な所を果たして上手く下りられるか心配だったが、実際下り始めたら登るより全然楽。
鎖場をひとつ下りた所で小学生ぐらいの男の子が登って来た。
更に少し下りたら、その子の弟と両親が登って来たので上で少し待つ。
弟は小学校に上がるか上がらないくらいだろうか。頑張ってるなと感心する。
その子が登るのを下で待つ両親と言葉を交わし、擦れ違えるようになってからまた下り始める。
登りのキツさが嘘のように軽快に下りられる。

滝の前のあの大きな岩の上が空いていたので座ってみる。岩がヒンヤリとして気持ち良い。
大の字になって寝っ転がると、大きな岩が火照った体の熱を吸い取ってくれる。
目を閉じると滝の音。何とも心地良い。
そのままずっとそうしていたかったが、他にも人がいたので独占しても悪いと思い
早々にまた下り始める。
膝が痛み始めたのでペースを落とす。
駐車場に戻って来るまでキャンプの事は頭から消えていた。





ソロキャンの最適地と思い喜び勇んで来たが、現地を見てから迷いが出た。
特に「これ」といった理由は挙げられないのだが何となくためらってしまう。
食料を買いそびれていた事を思い出し、取り敢えず下の町まで一旦下りることに。
車を運転しながらも、あそこにテントを張るかどうか迷い続ける。
途中ダム湖に寄り、サイトを物色するが火器使用禁止の看板が目に留る。
町でスーパーを発見するも迷いのせいで通り過ぎてしまい、そのまま頭の中をモヤモヤさせながら
町中をあっちこっち車でウロウロ走り、気が付いた時にはもう午後3時を過ぎていた。
意を決し慌ててスーパーで食料を調達、あの場所に戻るため車を走らせる。

 森への入口 其之参

山へ上がって行くと木に覆われた道は、もう車のヘッドライトを点けた方がいいだろうと
思うくらい暗くなり始めている。
あの大木の前に車を停め、急いで道具を運び下ろしシャングリラを張る。

キャンプ場の中は更に暗い。
真っ暗になる前に全てのセッティングを終えたが、一息入れようと湯を沸かし
コーヒーを飲む間にもどんどん暗くなり空気も冷えてくる。
辺りを包む闇が濃くなれば濃くなるほど、なんだかソワソワしてくる。
ベンチの上に置いたトレッキングランタンとキャンドルランタンに明かりを灯す。
しかしこの程度のランタンでは、手元を少し照らす程度で大して明るくはならない。
いや、どんな大型のランタンでも、その光はこの闇に吸い取られてしまうような気さえした。


少し寒くなってきたので焚火を始める。

 森への入口 其之参
 焚火動画(31秒、音あり)

この頃にはもう辺り一帯漆黒の闇に包まれていた。
右を向いても左を向いても後ろを向いても、その視線の先には真っ黒な色しか見えない。
入口に停めた車まで上着を取りに行く時ヘッドランプを点けたが、歩きながら途中でその灯りを
消し上を見上げると、木々の合間から小さな星がひとつ見えた。
自分が持って来た物以外で光りを放つ物はその星だけだった。
多分この闇は真の闇に近い。こんなにも暗い夜を過ごすのは久し振りだ。
普段暮らしている田舎町でも夜は結構明るく、これまでキャンプした場所もここまでの暗さは無い。
多分、今日ほど火の有り難みを強く感じた事は無いだろう。
古来人類が火を使い始めた時もこんな気持ちだったんだろうか。
それにしても、いつもより薪を焼べるペースが速いような気がする。


火にあたっている間水に浸けておいた米を炊き始め晩飯の支度。

 森への入口 其之参

 森への入口 其之参

 森への入口 其之参

炊いた米にレトルトのハヤシを掛けてハヤシライス、ハヤシを温めた湯を沸かしてコーンスープ。
メニューはこの2品だけ。サラダも買ってあったがその存在をスッカリ忘れていた。


大抵満腹になると心も落ち着くのだが、なかなか今夜はそうもいかない。
すぐ前を流れる川の音が結構大きいにも関わらず、川以外の自然が発する音がよく聞こえる。
周囲が闇に包まれているせいで目から入ってくる情報が少ない分、耳が冴えてしまうのだろうか?
色々な音が聞こえる。しかし、その多くが何の音なのか正体が分からない。
何か音がするとヘッドランプを点け、音のする方を確認してしまう。
少々恐怖を感じているのだ。
午前中、最初にここへ来て写真を撮りながらウロウロしていた時は、怖いなどとは
これっぽっちも思わなかった。
しかし、ここでキャンプするかどうか迷い始めたのは、この恐怖を自分でも気付かぬうちに
予感していたからなのかもしれない。
今までこんなシチュエーションでも割と平気なつもりでいたが、今夜自分の弱さを改めて思い知った。


少し感じた恐怖が増幅しないうちにシャングリラの中へ入り、小さなLEDランタンの灯りを点ける。
いや、入るというよりも逃げ込むと言った方が良いかもしれない。
薄っぺらなナイロンの布とは言え、外界から隔てられる物があるとやはり落ち着く。
Shangri-La 今の自分にとっては正に桃源郷なのである。
寒かったのでシュラフに潜り込んだが、まだ寝るには早いので本を読む。
読んでいる間は内容に引き込まれているせいか、外で何かの音がしても全く気にならない。
暫くして本を置き、シュラフのジッパーを上まで引き上げる。
LEDランタンの灯りは消すことが出来なかった。





かなり早くに目が覚めたが、まだ外は真っ暗なようなのでシュラフから出ずにまた目を閉じる。
再び目覚めると少しだけ明るくなっている。もう少し明るくなるまでと、また目を閉じる。
今まで聞いた事も無いような音が外から聞こえ、また目が覚める。
熟睡は出来なかった。
夜中に目が覚めるがすぐにうつらうつらする、うつらうつらするが暫くするとまた目が覚めてしまう。
そんな状態が何度も繰り返され、あまり寝たという実感も無く、まるでずっと夢でも
見続けているかのようだった。

コーヒーを飲みながら今日一日どうするか考えるが何も浮かばない。
取り敢えず朝飯の支度。

 湯を沸かし
 森への入口 其之参

 コイツを煮る
 森への入口 其之参

 ハイ、出来上がり
 森への入口 其之参

まず先に麺だけを食い、残ったスープを前の晩多めに炊いて残した米と合わせる。
そこへ水を足し、ラーメンに乗せて食うつもりで買った角煮をタレごと投入し少し煮る。

 ラーメン雑炊角煮入り
 森への入口 其之参

角煮が甘過ぎてあんまり旨くなかった。

結局今日やりたい事も特に無いので渋滞にハマらないうちに早めに帰ることに。
撤収前にちょっとだけ写真撮影。

 森への入口 其之参
 またシャングリラがヨレヨレのダルダルですな
 森への入口 其之参 森への入口 其之参
 森への入口 其之参 森への入口 其之参





もしかすると、ワイルドなキャンプに憧れを持っている自分は「秘密の花園」という
甘い言葉でまんまと誘い出され、その実態である森への入口(自然への入口)に於いて
その中に立ち入る資格があるかどうか試された、或いは、己の弱さを突き付けられ
まだその資格は無いと戒められたのかもしれない。

このキャンプから数日経った今現在、記事を書き振り返りながらそんな風に思った。


   「森への入口」おわり



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この記事へのコメント
こんばんは~^^

ありますよねー、私は平日ソロキャンで独り占めパターンが多いので管理されたキャンプ場でも夜中不意に恐怖を感じることがあります。
野営の醍醐味とは、そういう感情とも仲良く付き合うことなのかもしれませんが、感じるものは感じますし。
「ある意味、己の無力さを改めて知るために野営してるのか?」などと哲学的な自問自答したしりますですね。。。

そんなことを思いながら拝見すると、動画を見て改めて人は火に癒されるのだなぁと感じ入りました。

drunkwhaledrunkwhale
2009年10月16日 21:27
相変わらず文章がお上手ですねぇ。

私、このエントリを読んでて、過去のソロキャンを
今更ながら思い出してみると、おしっこがチビリそうになりましたよ(汗)

たとえ管理されたキャンプ場だとしても、野生動物や
天候の急変など、自然が相手の遊び(?)ですもんね。

ヤバイ・・・。
ソロキャンが億劫になってしまったら、アナタのせいですからね(笑)

ryutaroryutaro
2009年10月16日 23:16
drunkwhaleさん

 「自然を満喫する、自然を楽しむ」なんてよく言いますが、これは単に
 ごく一部、表面に触れているだけなのではないかと思ったりもします。
 自然の直中で毎日暮らしている訳ではないので、これはこれでいいのですが
 もう一歩中へ踏み込みたいのであれば、自然をよく知ることが必要なのではないでしょうか。
 その中でどんな動物が、どんな植物が、どんな生活をしているか
 その中でどんな風が吹き、どんな雨が降り、どんな空気が漂って何が起きているか。
 こういうことをひとつずつ知っていけば、その度に恐怖は減っていくのかもしれません。
 誰でも得体の知れないものは怖いですからね。

 まぁ、世の中には「元々そんなの全然平気」なんて肝の座った人もいるようですが(笑

DancinghorseDancinghorse
2009年10月17日 00:09
ryutaroさん

 全く知らなければ怖くない、ちょっと知れば怖くなる
 でも、深く知れば怖くなくなるんじゃないかなぁと思ったりします。

 もし億劫になってしまったら・・・私がお供しましょう♪
 でも2人揃ってガクブルしてたりして(笑

DancinghorseDancinghorse
2009年10月17日 00:10
なんかよく分かります。
闇に感じる威圧感的なものは、人間の原初の恐怖なのかもしれませんね。
テントにはいるとその空間はなぜか安全な気がして(笑)
だれか相手がいるとまた雰囲気ががらっと変わるんですけどねぇ

TakaTaka
2009年10月17日 01:10
Takaさん

 元は闇の中に潜む外敵に対するものだった恐怖がいつしかDNAに組込まれ
 外敵が殆ど居なくなった現在、恐怖だけが残ってしまった。
 実は恐怖は己の中にこそある。

 熊が出るようなとこは別として、こんな感じでしょうか?
 テントに入る、隔離されたところに入ると安心するってのは
 もしかすると胎内に居たときの感覚に似てるからなのかも知れませんね。

DancinghorseDancinghorse
2009年10月17日 21:07
本当に同じ場所でも書く人が違うと、雰囲気が違いますね。

Dancinghorsesさんのブログを見て、実家に住んでた頃は自然が嫌いだったことを思い出しました。
何しろ私の実家はここのキャンプ場と大差無いような場所なんです。
その頃の私にとって自然とは、闇、寒さ、湿地、蚊、毒蛇、棘のある藪、といった感じでした。
都会に住んでから忘れてました。

ちなみに棒ラーメンにはのりたまのふりかけがおすすめです。
あんまり美味しくないですけど。
ちいたろちいたろ
2009年11月07日 05:54
ちいたろさん

 > 本当に同じ場所でも書く人が違うと、雰囲気が違いますね。

 写真のせいか、なんとなく奇怪な雰囲気が少し出てしまったかもしれませんね(笑
 
 嫌な面しか見えなかった事でも時間と距離を置くと、また違う面が見えたりして
 良さが分かる場合もありますね。
 私が子供の頃に住んでた場所には嫌な思い出が沢山あるのですが
 今ではそれも懐かしく、戻ってみたいと思ったりします。

 実はこの時の棒ラーメン、賞味期限が大分過ぎてしまった物でした。
 今度買ったらのりたま試してみます。

Dancinghorse
2009年11月07日 23:30
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