以前は検索してもそれほどの量がヒットしなかったのに、今となってはワンサカ出てくる。
ネットで扱う店も増え、ククサ専門のネットショップまであるくらい。
以前は欲しくて欲しくて堪らなかったが、こう世に広まり持っている人も増えてしまうと
「もう今更なぁ・・・」なんて事も思ってしまう。
欲しいと思った時にさっさと買ってしまえば良かったのだが、ククサを上回る物欲対象が
次から次へと現れたり、懐が寒かったりしたせいで結局後回しになってしまっていた。
優先順位がそれほど高くならなかったのは、以前から「自作」という事が頭にあったせいかもしれない。
しかし、前々から機会があれば自作しようと思ってはいたものの、道具と材料の都合でこれまた
後回しになっていた。
足りなかった道具はカップの内側をくり抜くための刃物だったが、これはMora of Sweden社の
フックナイフを最近入手。あとは肝心の材料なのだが、どうせ作るなら良い材がいいと思っていた
ものの「コレ!」と思う物がなかなか見つからなかった。
高価な材を買うくらいなら最初からククサを買った方がいいし・・・。
とまぁ、いつまで経っても先へ進まないので、取り敢えず手元にある物で試作してみることにした。
材料は木製スプーンの時と同様に桜の木。
市販のククサにはバーチ・バール(樺の木の瘤)、あるいはカーリーバーチ(縮み杢の入った樺)が
使われているようだが、そういった材料を日本で気軽に入手するのはなかなか難しいかもしれない。
本来ならば半割にした丸太を使いたいところだが、そこまで太い物は無かったので
一番太くてクセが無さそうな物を手元にある物の中から選んだ。
断面が綺麗な丸ではなく片側が幾分潰れたような感じだったので、その部分がカップの底の方に
なるようにして余分な部分を斧で割り落とす。
次に、作りたい形を大雑把にペンで書き込み、余分な部分を手鋸で切り落とす。
この段階では形がハッキリイメージ出来てなかったので、アウトラインにかなり余裕を持たせた。
表皮に5mmほどの丸い穴が開いていたので「これはもしや」と思ったら、案の定、虫が食っていた。
しかし、それほど深い所までは達してなさそうだ。
木口に見える黒いシミは反対側の木口にも見られるので、多分中まで通っているだろう。
でもまぁ、今回は試作ということで気にせず先へ進む。
皮を剥いでみたところ裏側にも虫食いがあり、黒いシミも思ったより酷い。
ちょっとガッカリだが、他に丁度良い材も無いのでこのまま続行。
先に外側を粗方削り終えてから中をくり抜くか、中をくり抜いてから外側を削るか、どちらが良いか
分からなかったので両方交互に少しずつ削っていく。
というか、削り始めの時点では片手でしっかりホールド出来る形状ではなかったので、掴みどころを
得る為には中も削らなくてはならなかった。
万力を取り付けた作業台でもあればいいのだが、生憎そういう便利な物は持ち合わせていないので
削る作業の殆どを手で持ちながら行った。
内側は最初のうちは彫刻刀の曲丸刀で削っていき、深くなってきたらフックナイフを使う。
中をくり抜く場合、最初に太目の錐を取り付けた電動ドリルで何個か穴を開けて崩しておくと
彫るのが楽なのだが、電動工具は使いたくなかったので彫刻刀とフックナイフだけで削った。
単なる趣味なので効率とか関係ないし、手で削る作業も自分にとっては楽しいのだ。
1日数時間ずつ費やし、6日間程でペーパー掛けまで終えた。
「え、これがククサ? ハンドルの形が違うでしょ?」
粗削りの段階で気付かれた方がおられるかも知れないが、大抵のククサはハンドルに1個か2個の
穴が開いていてこんな形をしている物が多い。
これをこのまま真似て作っても何の面白味も無い。
そこで、ハンドルはフィンランドのククサではなく、スウェーデンの木彫りのカップである
Kåsa(コーサ、クォーサ)によくある形をイメージしてみた。
KuksaもKåsaも元々はサーメ伝統の物で、どちらもCupを意味する言葉らしいのだが、地域によって
独自に進化を遂げたのか形は少々異なる。カップ本体はKuksaの形を、ハンドルはKåsaの形を取り入れ
両者の雰囲気を兼ね備える物にしようと考えた。
KuksaとKåsaのミックス、よって「ククサ」とは呼ぶには相応しくない。
材質も樺の木ではなく桜だし。
何かしら名前を付けるとしたら、単に「北欧風カップ」になるだろうか。
ククサの売り文句にこういうのがよくある。
ククサはフィンランドの遊牧民サーメ人が使用していた伝統的な木製のカップ。
ラップランド地方特有の自然によって作り出されたバハカと呼ばれる白樺の固い瘤をくり抜いて作る。
サーメ人は決して自分で自分の為に作らない。なぜなら、幸せが逃げてしまうと言われているから。
フィンランドではククサは人に贈るもので、贈った相手に幸運をもたらすと言われている。
私のように自分で買うか作るかしなければ入手出来ない者にとっては「自分で自分の為に」という
部分が少々引っ掛かってしまいがちだが、以前ネットで検索したところ海外サイトでこのような
記述をしている所は見つけられなかった。
まるっきりの捏造ではないにしても、売り文句として少々誇張されているような気がしないでもない。
まぁ、この辺の解釈は個人によって異なるので突き詰めはしないが、あまり気にしなくても
良いのではとも思う。自分で作って使っている人も多いみたいだし。
買う時に気を付けなければならないのは製造国と材質。
Kuksaはそもそもフィンランドの物。
ネットを見ると「Kåsa」と書かれたタグが付いてたり、「製造国:スウェーデン、素材:ハンノキ」という
表記がされているにも関わらず、ククサと称して売られている物もある。
Kåsaはスウェーデンでの呼び名なので、厳密に考えるならククサとは別物。
最近はネットでもそこら辺のアウトドアショップでも、ククサのような形をした安価な木製カップが
売られているが、材質は明らかに樺ではないし、製造国も北欧ですらない中国だったりする。
材質は樺の木(白樺とは限らない)の瘤が正統らしい。
見た目だけで木の種類を見極めるのは難しいかもしれないが、本家本元フィンランド製ククサと
見比べれば、明らかにそれと異なる物の判別は可能だろう。
瘤と言っても大きい物から小さい物まであり、切り出した時に出る表面の模様も千差万別。
目安として瘤杢や縮み杢がある物を選べば確実だが、個体によってはそういう杢が
あまり出ていない物もあるようだ。
ネット通販を利用する場合、個体までは自分で選べないことが大半なので、もし綺麗な杢の
入った物が送られて来たならば幸運だ。
形は伝統的な物だったり、多少現代的なアレンジが加えられた物など、作り手(メーカー)に
よって様々な物がある。実のところ余り調べてないので、形が色々あるククサのうちどれが
本来の伝統的な形なのか正確には分からない。
よくある形は2穴ハンドルだが、古くはスウェーデンのKåsaに近いのではないかと今のところ思う。
気に入れば別に何でも良いという場合は別として、本物のククサを手に入れたいと思うならば
フィンランド製であることを確認するのが必要不可欠だろう。
クルミ油を塗ってみた
ここまでやると黒いシミがホントに残念でならない。
程度の良い材料が欲しいものである。
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まぁ、ククサは買っちゃった方が早いんですけどねぇ
こちらはスウェーデン製なので・・・
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